ハザマ薬局の病院研修

6年制薬学教育の成果

私が、医師になったのは1995年ですから、もう25年以上前のことになります。当時は臨床研修制度もなく、いきなり大学病院での泊まり込みの生活が始まって1年が終わり、その後、出張病院での研修医生活と息つく暇もありませんでした。

 

そんな中で、30過ぎぐらいの時に思ったのは、「鉄は熱いうちに打て」「若い頃の苦労は買ってでもしろ」という先達の言葉は、その通りだなということでした。

 

鉄は熱いうちに打て、というのは、(当時の)人生のほとんどをかけて、やっと医師になれた!という感動が新しいとき、つまり熱いうちに、どれだけの経験をしておくかが、その後の医師としての人生を左右すると思いました。

 

また、医師に成り立ての若い時には、迷ったらしんどいほう、迷ったら忙しい方と思って行動していました。時には「なんでこんなことになるんだろう」と思うこともありましたが、このころのある意味ではエグい経験が、自分の基礎になりました。

 

ハザマ薬局の薬剤師にも、是非、そういう経験をして欲しいと思い、1年間の病院実習を計画したのはもう4年ぐらい前でしょうか。その第一例の先生が、1年間の研修を終えました。

業務中でしたが、看護師、管理栄養士、理学療法士、医師が集まり、1年間、髙橋先生を支えてくれた薬剤部のスタッフが見守る中で始まりました。

 

スライド60枚でしたが、テンポ良く話も進み、内容も非常に興味深かったです。

 

薬局で1年余り、在宅・外来での対人業務にどっぷりつかって基本的な力をつけた上で、トライした病院実習。どんなことが学べたかという話や、それぞれの職種とどんな風に連携したのかということ、さらには、薬薬連携での取組を、写真やイラストをふんだんに交えて発表してくれました。

 

私も聞きながら、自社、自院のことながら、成長できる環境として非常に良い仕組ができたなと思いました。

この研修プランの素案は、思温病院に移った藤永先生がハザマ薬局時代に組み上げたものですが、とてもきめ細かく、また、愛情を持って指導してくれたことも大きかったと思います。

 

自分自身は、メンターがいたわけでも、病院での研修があったわけではない藤永先生は、もちまえの創造力と行動力でこの素晴らしい仕組を作り実践されました。

 

 

講義の後は、各職種から質問や感想の声がありましたが、髙橋先生の真面目さや積極性、人柄などもあってか、横で聞いていても、感激するような言葉がいくつも出てきました。特に、メインで活動した病棟の看護師長さんや主任さんに「頼りにしていましたよ」と言われていたことは、私もうれしかったです。

 

髙橋先生は、いわゆる新設薬大の6年制教育を受けていますが、同じ時期に薬学部を設置した兵庫医療大学(当時)の初代学長で、1期生が卒業するまで教育現場にいらっしゃった、当院特別顧問の松田暉先生に、総括をお願いしました。

 

松田先生は、「チーム医療」の実践を、6年制教育を受けた3年目の薬剤師が実践していることに「感動した」とおっしゃり、こういった取組は、もっと行われていくべきだともお話になりました。また、専門性を磨いていくための生涯研修のあり方についても、述べられ、最後には「素晴らしかった」と拍手をされました。

 

奇しくも、私の公聴会では、所属教室の教授で、副査をしていただいた松田先生は当然ながら最前列で座っていらっしゃいました。その前で、緊張しながら異種移植実用化に向けたブタの内在性レトロウイルスの研究成果を発表したのですが、最後に「エシカルなテーマも含む内容やな」とおっしゃっていただいたことを、突然思い出し、まぁ、私も50歳を超えましたので、懐かしくなりました。

 

超個人的な話になりますが、松田先生の教室の門戸を叩き、医師としての基本を身につけ、さらに学位をいただいて、さぁこれからという時に「薬局を継ぎたい」と口走った私に、「医者が薬局行って何をするんや」と松田先生に叱責をされたのが2004年。それから17年後に、私自身が作ってきた薬局で研修した2名の薬剤師が、私が変革に携わった病院で私の恩師の前で発表し「よかったんじゃないか」と言って頂けたことは、何か、17年間の胸のつかえが下りたような気持ちさえしました。

最後には、業務の合間に聞きに来てくださった皆さんと記念撮影をしました。マスク越しですが、みんなの表情、そして雰囲気は最高でした。

 

髙橋先生にとって、この1年間の学びは、きっと一生役に立つと思いますし、その成長に関われた私たちも、色々な学びをいただいたと思います。

 

期せずして、文部科学省の薬学系人材養成のあり方検討会のメンバーに選んで頂き、次のモデルコアカリキュラムの議論にも携わることになりました。薬剤師の臨床研修というのは直接のテーマではありませんが、学部教育・卒後臨床研修・生涯教育は同じベクトルで揃うべきと思いますので、また、情報を発信していきます。

 

 

4年間のハザマ薬局での初期研修制度では、すでに二人目の先生が病院での実習を始めていますし、常時、2名の研修生を予定しています。当院には、松田先生の他に、北陸大学で教鞭を執られていた尾山先生もいらっしゃいますし、ハザマ薬局のOBとして、藤永先生の他に、山本先生もいらっしゃいます。そして、ここでの取組を、他の医療機関や薬局でも使えるようにシステムを作っていきたいと考えています。是非、ご期待ください。