ハザマ薬局薬剤師レジデント便り(1)

薬局薬剤師が病院研修を始めています

今、厚生労働省では、「薬剤師の養成および資質向上等に関する検討会」という多少長い名前の検討会が開催されています。薬業系メディアなどでも頻繁に報道されているので、ご存じの方も多いでしょう。

 

そこでは、薬剤師はすべて医師のように病院での臨床研修義務化を行うという議論もあるようです。もちろん、実現可能性やその意義を含めて議論はあると思いますが、私は自分自身の経験ももとに(私の時代は臨床研修義務化はなかったですが)、ハザマ薬局の新卒薬剤師の研修プログラムに1年間の病院実習を取り入れたので、まとめておきます。

 

地域医療連携が進むためには、当然ですが、連携するものどうしがお互いの状況をよく知り、いい意味で慮った言動を行うことが重要です。

 

病診連携が曲がりなりにも進んでいくのは、開業医の先生は、基本的に病院勤務があるからではないかと私は思っています。ここまでは、病院よりはこちらの方がよい、ここからは病院じゃないとムリ、というのが分かるのは、やはり、双方の経験があるからだと思います。

 

薬薬連携と叫ばれて長いのですが、その言葉が、単に、患者さんの基本情報と薬の情報を引き継ぐだけなら、診療情報提供書の処方欄とお薬手帳で済むのかも知れませんし、来たるべきマイナンバーカードをキーとした医療情報一元化の社会では、薬剤師がわざわざ引き継がなくとも、全部分かってますけど、何か、となってしまいます。

しかし、今回の薬機法改正でもあったように、服用後のフォローを行うことになれば、様相は一変します。現在の処方内容(=薬物治療)の妥当性を薬剤師が薬学的知見(薬理学、薬物動態学、製剤学等)に基づいて評価して、患者の病状改善のためにどうするのかを医師にフィードバックすることが求められるようになったわけです。

 

外来から入院へ連携する場合には、外来処方医もしくは訪問診療医と薬局薬剤師は連携しながら薬物治療管理を行ってきた内容やそれらによる現在の処方内容、さらには、今回入院に至った経緯をサマリーにして病院薬剤師に連携する必要があります。

 

入院から外来へ連携する場合には、入院中に行った治療の概要やそれに伴う処方の変化、退院時の処方内容(=薬物治療)の内容と今後の留意点を薬学的見地に基づいて、薬局薬剤師に引き継がなければ、シームレスな地域医療連携はできなくなります。昨今ポリファーマシーによる入院も散見されますが、せっかく減らした薬が、外来・在宅の医師に戻したとたん、もとの処方内容に戻り、再入院に至るという最悪のケースだけは、避けなければなりません。

 

私は、この双方の経験を新人薬剤師がきちんと研修する仕組みを作ることが重要だと、服用後のフォロー、アセスメント、フィードバックといったことを考えはじめた5-6年ぐらい前から痛感するようになりました。2年ぐらい悶々としましたが、2年前の10月1日にファルメディコ薬剤師レジデントプログラムという案をまとめ、薬局のキャリアプラン作成チームに投げました。

 

それから2年経って、2020年10月1日から、ハザマ薬局で1年半頑張ってきた髙橋沙紀先生が、思温病院で研修を始めました。今日、ちょうど1ヶ月が終わり、土曜日朝に病棟で少し話をしましたが、色々と感じることがあり勉強しているようです。オーベン役は、ハザマ薬局で5年ほどがんばって、その後思温病院へ異動して1年半になる藤永智也先生がつとめてくれています。ハザマ薬局での1年半めがどんな感じなのかも十分に知り、また、自らキャリプランを作成してきた観点からも、適任だと思います。

 

消化器内科のドクターから輸液や抗生剤の使い方について課題をもらいながら勉強したり、血液内科のドクターからは、今度入院されてくる患者さんの化学療法について課題をいただきこれまた勉強しているようです。ちなみに、安全キャビネットを用いた抗がん剤のミキシングは、病院薬剤師経験が長い岸雄一薬局長が、手取り足取り教えてくれるようです。なんて、豪華な。

ちなみに、今日は、土曜日朝ということで、少し時間的にも余裕があったので、私から、モーニングレクチャーも行っていました。これまた、なんて豪華なw。

 

病院にきて、1ヶ月、何が一番印象的?と聞くと、休み明けで出勤してくると、入院され検薬もすませて、さぁこれからと思っていた患者さんが亡くなることがあることだと。

 

そうですね。人間の生死に関わる仕事が医療であり、それが仕事に対するスタンスを決める極めて重要な部分になると思います。そういったことは、半日や1週間程度の研修(というか、これは見学や体験ですね)では、難しいと思います。青森出身の髙橋先生は、将来的には地元でがんばるとは思いますが、是非その地力を大阪でしっかりとつけて欲しいと思います。

 

ちなみに、そんな話をしていたら、消化器内科の先生の個人レクチャーが始まりました。

 

テーマ? 

 

テーマは、コンビニで入手した鬼滅の刃の景品についてでしたw。

 

こういうこともあっての、医薬連携、医薬協業が始まっていくのだと思います。さわやかな土曜日の午前中でした。

ちなみに、こういった薬剤師の研修を、今後システムとして動かしていき、常時2名の薬局薬剤師が1年間の病院研修を行うような仕組みを構築します。仕組みというのは、給与や保険などの福利厚生、また、業務上は医療保険制度との整合性をどうとるかです。課題がないわけではないですが、不可能ではないと思います。

 

そして、ここでわかったことをもとに、全国で薬局で採用した薬剤師が病院で研修できる仕組みの素案を作り、世に問いたいと思います。私は制度作る側ではありませんが、ボトムアップで実績を作り提案していくことはできますので。もちろん、行政で担当されている方で、こりゃ面白そうとか、うちの薬局や病院もやりたいけど、詳しく知りたいと言う方は、こちらまでご連絡下さい。

 

また、こういった初期研修制度のもとで学べるというのは、これからの可能性が広い薬学生さんには意味があると思いますし、第二新卒の薬剤師さんもこの研修を受けることは可能です。

詳しくは、こちらから。