医療崩壊ならぬ

医療損壊という広範囲なダメージ

もう一昔前ですが、小松秀樹先生が医療崩壊という本を上梓されました。

立ち去り型サボタージュという言葉は、非常に衝撃的で、その当時、医師となって10年余りだった私も、なるほどな、と思うことも多かったです。

 

で、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大で、出てきた、医療崩壊。

 

全く別物の崩壊ですよね。欧米からの報道のように、

人工呼吸器が足りなくてものすごい数の方がバタバタと亡くなっていくとか、

外来の待合で点滴しながら人が倒れているというのは、

日本では幸いにもないのではないかと思いますが、

地域の基幹病院で予定手術や救急を取り止める、

外来診療や初診、新規入院はストップするというのは、

まさに、医療崩壊とも言うべき

 

状況だと思います。

当院は、180床の地域病院です。一般、地域包括、医療療養の3つの病床からなり、地域の基幹病院や

介護施設からのご紹介入院や時間外診療が多くを占めている現状で、新型コロナウイルス感染症については

PCR検査はもちろん、専門的な行える訳ではありません。

ですので、いわゆる今の医療崩壊という状況からは少し状況が異なりますが、やはり影響が出始めています。

外来での発熱者の対応も、訪問診療も、救急対応も、また、入院患者受け容れも、胃カメラも、胃瘻造設も

在宅患者さんの気管切開チューブの交換や発熱時の対応も、平時のようには行きません。当たり前ですが。

 

工夫を凝らしてなんとかやっていますので医療としては崩壊しているとは思いません。

しかし、全く通常のように動けてはいません。

 

言うなれば、医療損壊とも言うべき状況だと思います。

私の阪大第一外科時代の同期が働く病院(多くは地域の基幹病院)では、外科手術は制限され、

感染症管理にあたるケースも出てきているようです。悪性疾患の方にとって予定通りの日程で

検査や手術や治療が行えないのは、受ける方も行う方も悩み多い状態だと思います。

 

今は、全体最適を考えたシステム作りが必要だと現場にいても思います。

 

日本中にあるような当院を、医療損壊状態から医療崩壊に移行させないような取り組みを考えたいと思います。