きたる4月23日に大阪で薬局における非薬剤師業務を考えるシンポジウムを開催します。
私はクロージングリマークスを担当しますが、その抄録を一足先に公開します。
非薬剤師業務を考えることは、薬剤師業務の本質とは何か?ということを考えることだと行き着きました。
薬剤師業務の本質は、薬学的見地からの患者の状態の評価と次の一手の提案にあると思います。これには、決断と責任を伴いますが、それは、国家資格を持つ医療職として当然のことです。当日、お目にかかれるのを楽しみにしております。
「パートナー制度の導入の目的とは」
日本在宅薬学会理事長 狭間研至
新しい概念を導入する目的はなにか。これを間違うと、話はあらぬ方向に向かうということは、日常的に私たちがよく経験することである。日本における薬局補助者の役割を考える際にも、このポイントは外さないようにしたいと考えてきた。
もし、薬局補助者の導入が、現状の薬剤師の労働環境と米国テクニシャン制度を念頭に置いた、薬剤師の負担軽減や経営効率の向上を目的としたものであってはならないことは明確に申し上げておきたい。というのも、薬剤師の業務が、病院・薬局を問わず、医師が発行した処方箋を応需して、その内容を監査し、必要な疑義照会を行ったあと正確・迅速に調剤し、わかりやすい服薬指導とともに医薬品をお渡しするという業務であることが多い現状のままで、薬局補助者を導入すると、一時的には薬剤師の過重労働の改善や薬剤師不足の解消、さらには経営効率の向上は図れるかも知れないが、調剤報酬の引き下げは必然的に起こるだけでなく、中長期的には薬剤師不要論にまで行き着きかねないからである。では、薬局補助者の導入は不可能か、というと決してそうではない。重要なのは、この新しい概念を我が国導入する目的は何かということである。
私は、我が国が抱える地域医療の問題点の1つは、多剤併用、薬剤性有害事象だと考えてきた。これを解消するためには、調剤を担当した薬剤師が、薬をのんだあとの状態も薬学的にフォローアップし、薬学的知見に基づく指導義務を果たすことが必要でああり、これこそが、薬局補助者導入の目的である。ここをはずしてはならない。そのためには、以下の3つがポイントになる。
①薬剤師が調剤した薬剤を服用したあとの患者の状態を把握すること
②これらの状態を薬学的にアセスメントし改善策も含めて医師にフィードバックすること
③薬剤師が対人業務に専念するための時間・体力・気力を温存すること
本会では、2009年より「薬剤師のためのバイタルサイン講習会」を行ってきたがこれは、①のためのツールを手に入れていただくことが目的である。
また、2011年から始めた「薬局3.0セミナー」や2013年から始めた「認定薬剤師セミナー」で取り上げた内容の多くは、②のための薬学的知識をブラッシュアップしていただくことが目的となっている。
ただ、この2つだけでは、実際の現場で薬剤師の過労を招き、経営効率も一気に悪くなるため、様々な混乱が起こることが明らかになってきた。そこで、生まれたのが、薬局補助者を薬剤師業務をトータルに支えるパートナーと呼び、薬剤師が患者のそばに赴き、薬学的専門性を活かしながら対人業務に取り組むための時間・気力・体力を温存させることである。
2013年ごろより私が運営するハザマ薬局で「パートナー制度」を導入し、試行錯誤を繰り返した結果、失敗は数多くあったが、ようやく方向性が見えてきた。その経験を踏まえれば、これらのノウハウを日本在宅薬学会認定パートナー制度として広げていくことは、とりもなおさず、全国の薬剤師の働き方を変えていくきっかけを創ることだと確信している。
パートナー制度の普及は、薬剤師の対人業務へのシフトを可能にし、その結果として薬物治療の質的向上を図ることが目的である。是非、このポイントを外さずに、「パートナー」という新しい職種の確立と育成を進めていきたい。
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