おいしい業界がそうじゃなくなるだけ

 先日、当社がお取引をしていただいている

銀行の支店長と面談をしてきました。

その銀行さんは、この4−5年、メインとなって

お取引していただいているところですが、

この6月ごろに支店長の交代があったばかりです。


以前の支店長は、月に1回は面談を

重ねてきたこともあり、この業界のことなどを

色々とご説明し、ご存じだったのですが、今回の支店長は

私と同年代。やり手の支店長で、交代直後は

色々とお忙しいためか、月1回の面談は

担当者さんと行うだけで、支店長は初回のご挨拶程度で

その後はなかったのです。


「で、社長のとこの業界はどんな具合ですか?」

と、ずばっと聞かれます。あ、そういうことね、と

わかった私は、講演で話をしているように、いつもの

お話をしました。


処方箋1枚の売上は平均8,800円程度になっていること。

粗利は薬価差益を入れると3,000円ぐらいになること。

1日100人の患者さんがいらっしゃる開業医の近隣に

出店すれば、年間の売上は2億円、粗利は7,000万円近くに

なり得ること。

そのお店を10箇所開ければ、20億円、100店舗開ければ、

200億円の企業ができあがること。

でも、その薬局そのものに格別なバリューやコンピテンシーがあるわけではなく、場所が最も重要なこと…

これを、支店長の目をみながら、一気にしゃべりました。

最初は半笑いだった目が、途中でぎゅっと変わりました。


「そんなにあるんですか?」

「そうです。計算すればわかることです。」

「じゃ、僕が薬局で薬もらうときの説明も、

お金とられてるんですか?あの、要らん説明に!」

「そうです。」

「えー!?ホントですか?」

ソファで後ろにのけぞる支店長。


「3割負担ですから、もし、窓口で2,400円と言われたら

本当は8,000円かかっているんですよ。」

「あ、そうか。」

「2ヶ月後に残りは支払基金から確実に振り込まれます」

「あ。」

「そういうビジネスなんです。」

「いやぁ。おいしいでんなぁ。ぼろいでんなぁ」

「でも、支店長。」

「?」

「その構造が、来年4月に変わるかも知れないというのが

昨今のマスコミで出ている議論です。」

「なるほど。」

「立地依存から人材依存にいくべきなんです。」

「そら、そうですわ。そら、そうですわ。」

それからは、質問攻め。メモをとりながら、業界のこと、今後の展望のことなどなどを熱心に聞かれました。

へーっ!ほーっ!はーっ!という反応は、ある意味とても新鮮でしたが、多くの方にとってそうなんだと思います。


ある意味で、自分たちの業界のことを、客観視してお話しながら、先ほどの支店長の言葉を反芻していました。


「いやぁ。おいしいでんなぁ。ぼろいでんなぁ」


そう、この業界は、おいしい業界だったんですよね。ある意味ではぼろい業界だったのかも知れません。

この数年、だんだんそのうまみは薄まってきたかもしれませんが、まだまだその気はあったのでは

ないでしょうか。


で、来年の4月かどうかはわかりませんが、そんなおいしい業界ではなくなるだけなんでしょうね。

そんなことは、よくあることです。


おいしい業界をかぎ分けて、早く入って、利益を出すというのは、経営において極めて重要なことです。

それが最優先だった人は、業界を去るということが起こるだけかも知れません。

でも、それとは異なるものが最優先な人は、業界を去らずに、歯を食いしばって何かをするのでしょうね。


「また、社長。調剤ナンとかの制度が決まったら、また、業界全体のこと教えてください」

とノートを閉じる支店長の顔は、なんだか、最初のころとずいぶん違っていました。


雨降って地固まる。そんな言い古された表現が、数年後のこの業界で言われているのかも知れませんね。

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コメント: 1
  • #1

    吉川 玉子 (金曜日, 13 11月 2015 10:20)

    調剤薬局の薬価差益が下げられていく現状、かかりつけ薬局を厚労省が進めていきますが、お薬を貰う利用者からするとどこの調剤薬局も同じ。ここで昔ながらの相談ができればいいのに、と思っています。
    そこで「健康介護コンシェルジュ®」検定を始めました。身近に相談できるのが薬局だと思っています。