中小病院3.0?

期せずして、病院に診療活動の拠点を移して

1年あまりが経過しました。

 

無我夢中というか、何というか、あっという間に

時間が過ぎ去りましたが、ちょっと気がついたことが

あるので、書き留めておこうと思います。

 

最初に病院を見学に来たとき、設立40年を越えた

190床あまりの病院は、お世辞にもきれいとは言えず、

また、ちょっと見学させていただいた病棟や

外来で展開されている医療にも、いくつも

課題があるように思いました。

 

もちろん、その課題の多くは、今も残っていますが、

病院での診療を行っていく中で、何とかしなくちゃ、

という思いと、答えは現場にあるはずという妙な

確信で毎日を過ごしてきています。

 

そこで感じたことは、中小病院も変わっていかなくてはならないということでした。

高度成長期時代には、団塊の世代の医療ニーズは、その社会的背景も相まって、急性疾患に対する

急性期医療が多くを占めていたと思います。

 

また、医療技術自体も、現在ほどは進んでいなかったなかで、大学病院や国公立病院、地域の基幹病院で

ある程度の経験を積んだ先生が、独立し、病院を行うという時代はあったのではないかと思います。

 

その頃の中小病院は、外来を持ち、二次救急指定病院となり、手術室でも手術はそれなりにあるという

ことだったのかも知れません。

しかし、やはり、我が国の高齢化が進む中で、中小病院の在り方も大きく変わってきたようです。

 

医療技術が急激に進歩し、基幹病院ほどの治療を行うことが外科、内科を問わず難しくなってきました。

病院の階層化が進められ、看護師の配置基準が定まり、場合によって多くの中小病院は、

生活習慣病や慢性疾患の外来機能は残すものの、病棟としては、高齢者の長期療養の場所として

機能することで、時代の医療ニーズに応えてきたのではないかと思います。

 

そして、超高齢社会に突入し、地域包括ケアシステムという概念が厚生労働省から提唱され、

「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援」「住み慣れた地域で最期まで」ということを

具現化するために、在宅療養の推進、在宅死比率の向上、高齢者住宅の整備といったことが

一気呵成に行われてきたのがこの10年ぐらいでしょうか。このような背景の中で、

中小病院も、従来通りの、外来機能+長期療養機能みたいな感じでは、地域医療ニーズに

十分に応えることが難しくなっているのかも知れないと思いました。

 

言うなれば、中小病院も、変わりつつあるということです。

ミニ大学病院を目指し急性疾患を治療した時代=1.0

地域の慢性疾患の外来・療養を支えた時代=2.0

地域包括ケアシステムのハブとなる時代=3.0

というような感じでしょうか。まだ、わかりませんが、なんとなくの直感です。

これからもうちょっと精査していこうと思います。

 

この話が、嘘かホントかはわかりませんが、中小病院の在り方が変わっていくことは、どうも確実なようですし、

そのことを、トップが理解し、スタッフに伝え、組織を変えていくというステップまでつなげていければ

地域において、私たちが提供できる医療の質は大きく変わっていくはずだと思っています。

 

以前のブログにも書きましたが、当院が提供したい機能は以下の3つです。

 

1)地域の方々に医療をきちんと提供する外来機能、入院機能、そして、2次救急機能。

2)地域の基幹病院、高次機能病院の直接退院が難しい方や医療療養が必要な方のバックベッドとしての機能。

3)高齢者介護施設の入所者様の訪問診療と医療ニーズが高まった時の後方支援機能。

 

特に3)について、最近急速に増えてきているのが、病院に入院していた患者さんが

在宅療養に戻られたら、引き続き病院から訪問診療を行うということです。

 

 

私も、在宅療養支援診療所で7ー8年診療をしてきましたが、この感覚は新鮮でしたし、とても、興味深いものでした。

家ですごしたい、でも、ちょっとコワい。このコワい感じは、患者さんも、ご家族も、介護職の方も、そうですが、

訪問診療をする医師にとってもコワいものです。でも、入院病床を持ちながら、訪問させていただくというのは

このコワい感じを、多少なりとも軽減するのではないかと感じています。

そして、そこで大切なのがやはり、薬剤師との連携です。

 

病院では、幸いなことに、看護師、管理栄養士、理学療法士、薬剤師と一緒に患者さんを診ることが可能になってきました。

看護師はもともと連携してきましたが、管理栄養士、理学療法士と連携するのは、発見の連続です。

 

さらに、薬剤師との連携を従来以上に深めていけば

医療の質、経営の質は上がっていくと思います。

 

現在、日本の医療には大きな問題があります。一人一人ががんばれば解決するという大きさではなく、システマティックに物事の有り様や取り組み方を変えていかなくてはならないと思います。これは、何とかしなくてはなりません。

 

そして、やっぱり、答えは現場にあるはず。

そう信じて、今日も診療に取り組みたいと思います。

 

ちなみに、こういう環境でご一緒してくれる医師、薬剤師、看護師、理学療法士、作業療法士などの人材を募集しています。くわしくは、こちらまで。

 

楽ではないけれど、新しい医療の在り方を切り開いていこうという仲間たちがいます。ご応募、お待ちしています。